民法改正のポイント
平成30年7月に、相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と、法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。
改正の要点は以下の通りです。
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目次
配偶者居住権の創設
「配偶者居住権」とは、相続開始時に被相続人所有の建物にその配偶者が住んでいた場合に、終身または一定期間その建物に無償で住むことができる権利です。
居住権(配偶者居住権+敷地利用権)と所有権が分けられることになりました。居住権の期間は終身が原則です。
また居住権は登記されるため、仮に他の相続人が所有権を売却しても居住権が残っているため建物に住み続けることができます。
なお、この配偶者居住権は相続税の課税対象となります。評価額は、建物の残存耐用年数や相続した配偶者の平均余命を用いて計算されます。さらに、この建物の敷地も要件を満たせば小規模宅地の特例(居住用)を受けることができます。
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婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与しても、最高2,000万円までは贈与税が発生しないため、生前対策としてよく利用させています。
しかし、改正前はこの贈与は原則として遺産の先渡しとされてしまい、遺産分割の際には、贈与された居住用不動産は遺産に持ち戻されて相続分を計算されるため、結果的に贈与の意味が薄れていました。
改正後は、被相続人が持ち戻しを免除する意思表示をしていない場合でも、遺産に戻す必要がなくなりました。
ただし、遺留分侵害額の算定では遺産に含めるため注意が必要です。
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故人の預金から葬儀代、生活費が直ぐに引き出し可能
相続が発生すると被相続人の銀行口座は凍結されるため、葬儀代や生活費が引き出せないなどの問題がありました。
今回の改正で、遺産分割が終わる前でも一定の額(口座ごとの預金額×1/3×法定相続分)の払い戻しを受けられるようになりました。
ただし、一つの金融機関の引き出し限度額は150万円までとされています。
また後日、遺産分割協議が成立した際の公平性を図るために、この払い戻しを受けた相続人については遺産の一部を分割取得したとみなされます。上記以外に、家庭裁判所の判断を経て限度額以上の預貯金の仮払いを受ける方法もあります。
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義理の両親の介護が「特別寄与」として承認
被相続人である義父母などを介護した相続人以外の親族が、相続人にたいして金銭(特別寄与料)の請求をすることができるようになりました。
相続人が複数いる場合は、相続人全員で負担してもらいます。もし相続人が支払いを拒んだ場合は、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
なお、特別寄与料として受け取った分は遺贈により取得したものとみなされるため、相続税の課税対象となり、相続税が発生する可能性があります。(2割加算の対象)
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不足分は金銭で補う「遺留分制度の見直し」
「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人に最低限保証されている相続分のことです。遺留分の計算には相続開始時の遺産だけでなく、期間の制限なしに生前に贈与された財産を含めることとされていました。
また、遺留分の請求を受けた結果、遺産である不動産などが相続人等で共有状態となってしまうなど権利関係が複雑になっていました。
改正後は、原則、相続開始前10年以内の贈与分のみ遺産に含めることになりました。
さらに、侵害された遺留分は金銭債権として請求できるため、遺留分相当額を現金で支払えば不動産の持ち分はそのまま維持できるなど、より柔軟な対応が可能となりました。また、遺留分減殺請求によって生ずる権利が金銭債権となることに伴い、その名称も「遺留分侵害額請求」となります。
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自筆証書遺言の「形式の緩和」と「保管制度の創設」
自筆証書遺言に添付する財産目録(不動産や預貯金等の一覧)について、手書きの代わりにパソコンで作成したものや通帳のコピー等を添付することができるようになりました。
また、2020年7月からは、作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度がスタートします。今まで、遺言者の死亡後に遺言書が発見された場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要でしたが、この保管制度を利用すれば検認手続きが不要となり、直ぐに相続手続きを始めることができます。
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