不動産があると相続トラブルが起きやすい?
不動産の相続トラブルは具体的にどのようなトラブルが起こるのだろう?と心配される方も多いと思います。
不動産は高額な財産であり、現金のように簡単に分ける事ができないため、トラブルに発展しやすくなります。
実際に不動産の相続トラブルが発生してしまうと、解決までに想像以上に長い時間を要してしまったり、他の相続人との関係が悪くなってしまったりしてしまうこともあります。
そういった事態を避けるためには、トラブルの事例と対策・解決方を知って、事前に対策をしておくことが必要です。
本記事では、よくある不動産の相続トラブルを紹介していきます。
不動産を誰が相続するのか決まらない
これは不動産相続トラブルの代表例です。
以下のような方は特に注意が必要です。
・自分以外にも相続人がいる
・遺産のほとんどを不動産が占めている
・不動産の評価額が高い
よくあるトラブル事例
・残された遺産には人気エリアに位置し、最近リフォームされた自宅(評価額7,000万円)と現金2,500万円があった
・遺産分割を巡り、長男と次男は共に自宅の所有を望んだため、協議は難航
・お互いが譲歩しない結果、以前は仲が良かった兄弟の関係が悪化
解決策
上記のようなトラブルが起こってしまった場合は、以下のような方法で解決を図りましょう。
①不動産の分割方法を話し合う
不動産の分割の方法は4つあります。4つのうちのいずれかで解決ができないかまずは話し合ってみましょう。
①現物分割
ひとつの土地をそのまま複数人で分ける方法
②共有分割
ひとつの土地を複数の相続人の共有名義にして相続する方法
③代償分割
現物財産の一部(不動産等)、もしくは全てを相続人の1人が相続し、代わりに他の相続人に代償金を支払う方法
④換価分割
財産の一部(不動産や有価証券等)、もしくは全てを売却し、現金化してから分割する方法
②遺産分割調停を申し立てる
話し合いで解決できなかった場合、遺産分割調停を申し立て、解決を図る方法があります。
遺産分割調停とは、亡くなった人の遺産について相続人間で意見の食い違いがあるときに、裁判所を介して公正な第三者(調停委員)の助けを借りて、解決を図る手続きです。
相続人同士で合意に達することができない場合に、話し合いによる解決を目指し、全員が納得のいく遺産分割を行うための方法です。
調停では、相続人全員の立場や要望を考慮しながら、調停委員が中立的な立場から解決策を提案し、合意形成を促します。調停によって合意が成立すれば、裁判所から正式な決定が出され、その内容に従って遺産を分割します。
相続税が支払えない
遺産に不動産が含まれる場合、相続税が支払えない、ということがしばしば起こります。
相続税は原則現金で納めなければならないため、遺産が不動産ばかりだと相続税の納付にあてる現金が足りなくなってしまうことがあるのです。
以下のような方は特に注意が必要です。
・遺産の総額が基礎控除額を超える
※基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の人数
・遺産のほとんどを不動産が占めていて現金がほぼない
よくあるトラブル事例
・遺された遺産には自宅と賃貸アパートがあった
・遺産を調べ、相続手続きを進めるうちに、相続税が800万円かかることが判明した
・現金は介護費用に使用してしまいほとんど残されていなかった
解決策
上記のようなトラブルが起こってしまった場合は、以下のような方法で解決を図りましょう。
①延納制度を利用する
相続税を期限までに納付することが困難な場合には、相続税の延納制度を利用することができます。
この制度を利用することで、相続人は相続税の全額または一部を、定められた期間内で分割して支払うことが可能になります。
ただし、制度の利用には税務署への申請が必要で、一定の条件を満たす必要があります。
また、延納が認められると、税金の支払いが猶予されますが、その間利息が発生する点には注意が必要です。
②物納制度を利用する
相続税を現金で納付することが難しい場合には、現金の代わりに相続した財産(主に不動産や株式など)を納めることができます。
この制度を利用することで、相続人は現金を準備しなくても、相続した資産そのものを税金の支払いに充てることが可能になります。
ただし、物納を利用するには税務署への申請が必要で、評価額や物納に適した資産かどうかなど、一定の条件を満たす必要があります。
また、全ての財産が物納に使えるわけではないため、利用できる財産の種類や条件について事前に確認しておくことが重要です。
不動産を相続しようとしたら、前の世代の名義のままだった
遺産分割協議書を作成して、不動産を相続しようと不動産関係の書類を取り寄せた後に、不動産の名義変更がされていなかった、というケースがあります。中には、何世代か前のままだったと発覚するケースもあります。
よくあるトラブル事例
・父が亡くなり不動産の相続のため書類を取り寄せると名義が祖父のままであることが判明
・名義を祖父から長男へ直接変更することができない(祖父→父→長男へと変更する必要がある)
不動産の名義変更の際には、前の相続の名義変更を済ませる必要があります。
しかし、ひとつ前の相続の相続人と連絡が取れないケースも多く、スムーズに進まないことが少なくありません。
非常に手間と時間がかかる手続きですが、面倒だからと放置していると、相続人がどんどん増えてしまい、収拾がつかなくなってしまいます。
解決策
上記のようなトラブルが起こってしまった場合は、以下のような方法で解決を図りましょう。
先に起こった相続の名義変更から行う
このようなトラブルが起こった場合には、先に起こった相続の名義変更から行い、そのあとに今回発生した相続の名義変更を進める必要があります。
連絡が取れない相続人がいたり、名義変更に同意してくれなかったりする場合には、専門家に依頼して相続人の調査を行ったり、遺産分割調停を申し立てたりすることが有効です。
相続した不動産に住む予定がなく空き家になっている
相続人の中で、全員の意向が一致しないと相続の手続きや売却の手続きが進められません。
しかし、亡くなった人が住んでいた家をそのまま放置していると、空き家トラブルを引き起こすおそれがあります。
空き家にしておくリスク
空き家にしておくリスクは以下のようなものがあります。
①建物が劣化する
使用されていないと、家の老朽化が早まります
②犯罪に悪用される
空き家は盗難や侵入のリスクが高く、ごみを不法投棄されることもあります
③固定資産税
空き家でも固定資産税の支払いが必要です
※家の劣化が進むと市町村から「特定空き家」に認定され、固定資産税が6倍になります
④近隣とのトラブル
空き家が周囲の景観を損ね、近隣住民との関係が悪化する可能性があります
⑤法的責任
空き家が原因で事故が起こった場合、所有者が損害賠償義務等、法的な責任を問われることがあります
よくあるトラブル事例
・思い出が詰まった実家を壊したくない、という想いから残しておくことにした
・遠方に住んでいるため残した実家には足を運ばなくなっていった
・数年後訪れると建物が劣化しており、修繕のために300万円の費用がかかることになった
空き家のまま放置してしまうと、建物が劣化してしまうだけでなく、後から費用が掛かってしまうこともあります。
解決策
空き家トラブルのリスクがあるだけでなく、固定資産税や修繕維持費も発生し、管理のための労力がかかってしまいます。ご家族が住まれないのであれば、賃貸などで有効活用することをおすすめいたします。
まとめ
不動産の相続は注意すべきポイントが非常に多いです。
トラブルが起こってしまった際には、専門家に相談し、ひとつずつ解決していく必要があります。
また、相続が発生する前にできる対策として、遺言書を作成する、将来相続人となる方と配偶者を含め、事前に話し合う等を行っておくことでスムーズに相続できる可能性が高くなります。
まずは、相続財産を把握し、相続人とも早めの話し合いを検討しましょう。