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相続手続きのスケジュールを専門家が徹底解説

大切な方、身近な方が亡くなるとそのご家族や関係者の方達は様々な手続きや届出、申告等を行うことになります。
これらの手続きや届出、申告等には期限が定められているものが数多くあります。

期限内に届出・申告等を行う必要があります。手続きをスムーズに行うためには、それぞれの手続きについて具体的に内容を把握しておくことが大切です。

この記事では、相続が発生したらすべき手続きの主な内容とスケジュールをご紹介します。

相続手続の目安スケジュール

●初七日後:初七日が終わって少し落ち着いてから、公共料金などの名義変更・解約手続き、年金・生命保険関係の手続きを行う

●亡くなってから2か月後:遺産を引き継ぐための手続きに必要となる相続人・相続財産の調査を終了させる。

●亡くなってから半年~8か月後:遺産分割協議を終了させる。特に、相続税が発生する方は、亡くなってから10ヵ月以内に相続税申告をする必要があるため、余裕を持って遺産分割協議を進めましょう。

上記は、あくまで目安のスケジュールです。個々の事情によっては優先しなければいけない手続きがある場合もあります。

より具体的な内容とスケジュールを以下にご紹介します。

被相続人の死亡(相続開始)

家族が亡くなったときには死亡診断書を交付してもらいましょう。

死亡診断書はこの後の死亡届提出だけでなく、生命保険金の請求等でも必要になりますので、必ずコピーを取得しておきましょう。

死亡届の提出

相続とは、被相続人が死亡した時から必ず開始されるものです。

相続が発生したらまず死亡届の提出を7日以内に行いましょう。

年金の受給停止手続き(厚生年金は10日以内)

故人が年金を受給されていた場合、年金を受け取る権利もなくなるため、受給停止を年金事務所または年金相談センターに、死後10日以内に届け出る必要があります。

これを「死亡の届出」と言います。

手続きの遅れにより受け取り過ぎた年金は、後日返金しなければなりませんので、期限内に手続きを済ませる必要があります。
※なお、日本年金機構に個人番号(マイナンバー)が収録されている方は、原則として、「年金受給権者死亡届(報告書)」を省略できます。)

世帯主変更届(住民異動届)

住民票からの抹消は、死亡届を提出することによって自動的に処理されますが、故人が世帯主だった場合には、世帯主の変更届や住民票関係の手続きをしなければなりません。

遺された世帯員が2人以上いる場合には、世帯主変更届(住民異動届)を提出しましょう。

期限は故人の死亡後14日以内となっていますが、死亡届提出と一緒に行うのがおすすめです。

健康保険の手続き

故人の死亡後14日以内に、故人が加入していた健康保険の「資格喪失手続き」と「健康保険証の返却」を行いましょう。

日本国内に住所がある人は年齢や国籍に関わらず、以下のいずれかの健康保険に加入しています。

 国民健康保険:自営業者や学生
 後期高齢者医療保険:75歳以上の人
 被用者の健康保険:会社員や公務員

加入している健康保険によって、手続き方法や必要書類が異なるのでご注意ください。

また、故人の家族が扶養に入っていた場合には、自分自身の健康保険証も返却する必要がある点や自分で国民健康保険に加入する、別の家族の扶養に入るなどの手続きも必要です。

介護保険の資格喪失手続き・介護保険証の返却

故人が65歳以上もしくは40~64歳で要介護認定を受けていた場合には、死亡日から14日以内に「介護保険被保険者証の返却」と「介護保険資格喪失届の提出」が必要です。

介護を受ける場合に受け取れる介護保険は、死後自動的に資格が失われるようになっていません。

そのため、「介護保険被保険者証の返却」と「介護保険資格喪失届の提出」を故人の死亡から14日以内に
故人の住所があった市区町村役場まで行って手続きをする必要があります。

公共料金等の名義変更・解約など

故人の死亡後は、公共料金の名義変更や解約など様々な契約手続きも必要になります。

契約手続きの変更や解約には法的な期限はありませんが、料金が発生する手続きは早めに解約してしまうのが良いでしょう。

名義変更手続きや解約が必要な主な契約

 ●公共料金(電気・ガス・水道など)
 ●クレジットカード・メンバーカード
 ●携帯・固定電話・プロバイダー・ネット上の有料サービス
 ●運転免許証・パスポート

これらの手続きと同時に進めなければいけないのが、遺産を引き継ぐための手続きに必要となる相続人・相続財産の調査です。

遺言書の有無の確認・相続人の調査・相続財産の把握

まずは、遺言の有無を確認します。遺言書の有無によりその後の手続きが異なりますので、必ず確認しておきましょう。

遺言書がある場合、法定相続分と異なる割合での遺産分割や法定相続人以外に財産を受け継げます。

そのため、遺産分割協議完了後に遺言書が見つかってしまうと、遺産分割協議のやり直しになる恐れがあり非常に手間がかかります。

遺言書がある場合

遺言書の検認(家庭裁判所での手続きが必要)を行います。

遺言書の検認とは、遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言書を提出して相続人などの立会いのもとで、遺言書を開封し、遺言書の内容を確認することです。

そうすることで相続人に対して、確かに遺言はあったんだと遺言書の存在を明確にして偽造されることを防ぐための手続きです。
※公正証書遺言については、公証人が作成しているので、改ざんや偽造される可能性はないということで検認手続きをする必要はありません。

遺言書がない場合

故人が遺言書を作成していなく遺産分割協議を行うときには、相続人の調査を最初に行いましょう。

遺産分割協議は法定相続人全員で参加する必要があり、新たに相続人が見つかってしまうと遺産分割協議をやり直さなければならないからです。

相続人の調査は、戸籍謄本などの書類を収集して行います。

相続人の確定や戸籍謄本の収集完了後は、相続財産の調査を行います。
これらが完了した後に、相続方法を決定します。

相続方法の決定について

それぞれの財産についてプラスかマイナスか調査し、その財産が相続人にとって必要か不要かを判断していただきます。

その判断ができたら、次に相続するかどうかを決めます。

相続の方法は次の3つがあります。

1.相続財産を単純承認する

すべての相続財産をそのまま相続する選択です。
単純承認を選択した場合は、このまま具体的な相続手続きに進みます。

2.相続財産を放棄する

何も受け継がない選択で、これを相続放棄と呼びます。

マイナスの財産の方が多いときに、よく選択される方法で、相続が開始したことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申立をします。

3.相続財産を限定承認する

被相続人のプラスの財産、マイナスの財産がどの程度あるか不明である場合等に、プラスの財産の限度でマイナスの財産を受け継ぐ選択です。

結果的にマイナスの財産よりプラスの財産のほうが多かった場合、財産はそのまま引き継げます。

相続が開始されたことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に対して限定承認の申立をします。


なお、相続財産の使い込みや隠匿も単純承認とみなされますので、後から共同相続人の一人が財産をごまかしていたことがわかると大変なことになります。

単純承認をした場合、次のステップとして相続放棄をしなかった相続人の間で財産の分け方を決める話し合いをします。

所得税の準確定申告

所得税の準確定申告とは、1年の途中で死亡した人に確定申告の必要があった場合に、故人の確定申告を相続人が代わりに行うことを指します。

所得税の準確定申告は申告が必要である人の死亡を知ってから4か月以内に行います。

また、納税の期限も、準確定申告の提出期限と同一ですので、注意が必要です。

さらに、電子申告は準確定申告には使用できないため、故人の住所地の管轄の税務署に申告書を提出する必要があります。

遺産分割協議の開始

遺言書がなかった場合には、相続人全員で相続財産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行います。

遺産分割協議に法的な期限はありませんが、後述する相続税申告時に遺産分割協議書の提出が必要になるので、相続開始から10ヶ月以内に完了させるのが理想です。

なお、遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、全員が1ヶ所に集まり行う必要はありません

電話やメール、その他の方法で意見交換をしながら協議を進めるのでも、問題ありません。

意見の相違や連絡が取れない相続人がいて遺産分割協議が難しい場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、裁判所関与のもと話し合いを進めなければなりません。

遺産分割協議が完了したら、決定した内容を遺産分割協議書にまとめます。

遺言書や遺産分割協議書の内容に従って各種名義変更の手続きを実施

預貯金・有価証券等の名義変更手続き

遺産分割協議書の作成が完了したら、各相続財産の相続手続きを行えます。

相続した不動産の名義変更手続き

令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されます。

そのため、不動産を相続したら相続登記が必要となります。

参照:法務省 不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~

相続税の申告

相続財産の分割方法が決定したら、相続財産の評価額を算出し相続税がかかるかどうか計算をしましょう。

相続税がかかる場合は、10ヶ月以内に相続税の申告・納税を行わなければなりません。

相続税の基礎控除

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除枠が用意されています。

相続財産がそもそも基礎控除の範囲内に収まる場合には、相続税の申告も納税も必要ありません。

必要な手続きを把握して相続手続きをスムーズに進めましょう

相続の手続きは100種類以上ある、とも言われております。

やるべきことが多く、期限が決まっているものも多くあるので、必要な手続きを把握したうえで、手続きを進めていくことが重要になってきます。

また、場合によっては相続手続きを行った後に次の相続の対策が必要になってくるケースも少なくありません。

少しでも疑問や不安があれば、専門家に相談することをおすすめいたします。

この記事を担当した税理士
税理士法人ネクストワン 代表 橋本 和政
保有資格税理士・行政書士
専門分野相続税申告、相続手続き、遺言
経歴平成10年6月開業
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